神戸地方裁判所 昭和57年(わ)441号 判決 1982年9月02日
裁判所書記官
石川芳郎
本店所在地
兵庫県尼崎市武庫之荘七丁目一一番一〇号
福田株式会社
右代表者代表取締役福田雄次
本籍
同県西脇市和田町一〇一三番地
住居
同県尼崎市武庫之荘五丁目二九番一五号
会社役員
福田雄次
昭和一七年一月一二日生
右福田株式会社及び福田雄次に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官田村範博出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人福田株式会社を罰金七〇〇万円に、被告人福田雄次を懲役六月に各処する。
被告人福田雄次に対し、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人福田株式会社(以下、「被告会社」という)は、兵庫県尼崎市武庫之荘七丁目一一番一〇号に本店を置き、ハンカチーフの製造、卸売業を営むもの、被告人福田雄次は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人福田は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て
第一 昭和五三年五月一日から同五四年四月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が四、五六八万三、四六八円(別紙修正損益計算書(1)参照)で、これに対する法人税額が一、七一五万四、三〇〇円であるのに、売上の一部を除外し、翌事業年度の仕入を当事業年度の仕入に計上するなどして所得を秘匿した上、同五四年六月三〇日、兵庫県尼崎市西難波町一丁目八番一号所在所轄尼崎税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一、七三一万七、七〇三円で、これに対する法人税額が五八三万五、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税一、一三一万九、三〇〇円を免れた
第二 同五四年五月一日から同五五年四月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が三、五六八万八、九八三円(別紙修正損益計算書(2)参照)で、これに対する法人税額が一、三四〇万二、〇〇〇円であるのに、前同様の方法により所得を秘匿した上、同五五年六月二八日、前記尼崎税務署において、同税務署長に対し右事業年度の所得金額が一、九八九万四、七五六円で、これに対する法人税額が七〇八万八、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税六三一万七、六〇〇円を免れた
第三 同五五年五月一日から同五六年四月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が六、三七四万八、三一九円(別紙修正損益計算書(3)参照)で、これに対する法人税額が二、五七六万二、七〇〇円であるのに、前同様の方法により所得を秘匿した上、同五六年六月二九日、前記尼崎税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二、三二五万一、二六四円で、これに対する法人税額が八七五万四、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税一、七〇〇万八、七〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一 被告会社代表者兼被告人福田雄次(以下、単に「被告人」という)の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書三通
一 被告人の収税管吏に対する質問てん末書一二通
一 吉田徹夫、星出清隆及び長谷川陽一の検察官に対する各供述調書
一 吉田徹夫(二通)、淀谷義隆、坂本岩男(二通)、仙石庫次(二通)、藤田寛(二通)、南部外茂補、星出清隆、海老名昭夫及び長谷川陽一(二通)の収税官吏に対する各質問てん末書
一 大津良三の収税官吏宛供述書
一 収税官吏作成の昭和五六年一〇月三〇日付、同年一一月二日付、同月五日付、同月一一日付(検甲第一二号証及び第一五号証)、同月二〇日付及び昭和五七年一月一九日付(二通)各査察官調査書
一 尼崎税務署長作成の同年三月五日付証明書
判示冒頭の事実につき
一 神戸地方法務局尼崎支局登記官作成の登記簿謄本
判事第一及び第二の事実につき
一 収税官吏作成の昭和五六年一〇月一五日付及び同年一一月一一日付(検甲第一一号証)各査察官調査書
判事第一の事実につき
一 収税官吏作成の同月一二日付及び同月一六日付各査察官調査書
一 尼崎税務署長作成の昭和五七年一月二二日付証明書(昭和五三年度分)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(同年度分)
判示第二の事実につき
一 永橋六蔵の収税官吏に対する質問てん末書
一 尼崎税務署長作成の昭和五七年一月二二日付証明書(昭和五四年度分)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(同年度分)
判事第三の事実につき
一 尼崎税務署長作成の昭和五七年一月二二日付証明書(昭和五五年度分)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(同年度分)
(法令の適用)
被告会社及び被告人福田雄次の判示第一及び第二の各所為はいずれも昭和五六年法律五四号附則五条により同法による改正前の法人税法一五九条(被告会社については、さらに同法一六四条一項)、判示第三の各所為はいずれも法人税法一五九条(被告会社については、さらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人福田雄次の判示第一ないし第三の各罪につき所定刑中いずれも懲役刑を選択し、被告会社、被告人福田雄次につき以上の各罪はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各所定の罰金を合算した金額の範囲内で被告人福田雄次については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告会社を罰金七〇〇万円に、被告人福田雄次を懲役六月に各処し、情状により同法二五条一項を適用して被告人福田雄次に対してこの裁判の確定した日から二年間右の刑の執行を猶予することとする。
(量刑の事情)
本件は、被告会社の代表取締役をしている被告人福田が、被告会社の業務に関し、昭和五三年度から同五五年度までの三年間の事業年度にわたり、不正な方法で所得を秘匿して合計三、四〇〇万円余りの法人税をほ脱した事案であって、ほ脱額は高額であるとともに、そのほ脱率も比較的高く、この種事案が頻発すると、国民の間に税の不公平をもたらし、かつその納税意欲を損うものであること等を考慮すると被告会社及び被告人福田の刑事責任は決して軽いものではない。
しかしながら、犯行の動機は不況の繊維業界の中にあって、取引先に対する売掛金のこげ付等による連鎖倒産の不安から内部蓄積を図ったというものであって同情の余地がないではないこと、犯行の主たる方法は、売上の一部を除外する他は翌事業年度の仕入をその前年度に計上するというものであって比較的単純かつ初歩的なものであること、本件査察開始後本税、重加算税、延滞税、地方税などを完納するとともに経理の明朗化に意を尽くしていること、被告人福田は、前科前歴はなく、勤勉であり、かつ本件につき反省悔悟しているなどの有利な諸事情も認められるのでこれらを総合考慮し、被告会社及び被告人福田につき各主文のとおり量刑したうえ被告人福田に対してはその刑の執行を猶予することとした。
よって主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小林充 裁判官 重村和男 裁判官 玉置健)
修正損益計算書(1)
自 昭和53年5月1日
至 昭和54年4月30日
<省略>
<省略>
修正損益計算書(2)
自 昭和54年5月1日
至 昭和55年4月30日
<省略>
<省略>
修正損益計算書
自 昭和55年5月1日
至 昭和56年4月30日
<省略>
<省略>